道徳の時間

2012年3月19日 エッセイ
ホームヘルパー養成講座に通っている知人が、講義で聴いた話です。

 あるグループホームに入所していた認知症のおじいさんが自殺をほのめかす言葉を残して、外出しました。後を追った介護士。引き留めても感情が高ぶるだけなので、雑談をしながら一緒に歩きました。

 歩道橋の上で「ここがいいか」というおじいさんに「いや、もっと他の場所がいいですよ」。

ビルの屋上に来ると「もっといい場所を探しましょうよ」。

 そのうちに、おじいさんは当初の目的を忘れ、介護士と散歩している気分になっていきました。

 夕暮れ近く、おなかがすいたおじいさんは、目に付いたハンバーガーショップに入りました。

 注文をして、レジの女性に「いくらだ」とポケットから取り出したのは、くしゃくしゃのティッシュペーパー。

 介護士は一瞬、青ざめました。他人から間違いを指摘されると、認知症の人は逆上して不安定になることがよくあるからです。

 でも、レジの若い女性は落ち着いて、笑顔でこう答えました。

 「申し訳ありません。当店においては現在、こちらのお札はご利用できなくなっております」

 おじいさんは「そうか、ここでは、この金は使えんのか」と、あらためてポケットの小銭を取り出しました。
 介護士はすっかり、この店のファンになったそうです。

http://iryou.chunichi.co.jp/medical_column/leaf/20120314172444122


何か、ホッコリしますね(^O^)

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