石油カルテル8

2013年12月22日
石油カルテル8
 滞在期問中はワシントンで国務省関係者とも会談させたが、このときは、タリバンがテロリストを支援していることは話題にならなかったし、オサマ・ビンラディンの身柄引き渡しも一切触れられなかった。代わりにユノカルは、「分け前にっいて気前のいい提案をした」とジャーナリストのジョン・ピルジャーは述べている。このとき、ディック.・チェイニーはテキサスにあるハリバートンの本社にいた。  ハリバートンは、ユノカルとタリバンのパイプライン計画から莫大な利益を得ることになっていた。  ◎見捨てられたタリバン、バイプラインはユノカルに、費用は納税者に  ユノカルの取引がっぶれた理由はいくっかあるが、最も大きかったのは、タリバンによる信じがたい女性虐待と基本的人権を無視した行動に、女性団体の怒りが爆発したことだった。アメリカの女性団体はユノカルに対する抗議行動を組織するようになり、ロサンゼルスのフェミニスト・マジョリティー財団はカリフォルニア州政府に、タリバンとの取引を認めた認可を取り消すよう求める請願書を提出した。タリバン政権が承認されることは不可能となった。  その後一九九八年になって、ケニアとタンザニアのアメリカ大使館爆破事件が起こり、アメリカ人一二人を含む二二四人が死亡した。オサマ・ビンラディンがこの非道行為の犯人とされ、クリントン大統領は犯人をかくまっていると言われたアフガニスタンとスーダン国内の標的への攻撃を命じた。クリントンは併せてオサマ・ビンラディンの資産を(この段階で)凍結し、アメリカ企業がビンラディンと取引することを禁止した。きっとブッシュ・ファミリーは海外へでも出かけていて、このことを知らなかったのだろう。  こうした展開を受けて計画は潰れ、一九九八年十二月四日、ユノカルはパイプラインの契約から手を引いた。ユノカルの外交問題担当副社長ジョン・J・マレスカは米下院外交委員会で、パイプライン計画にとって「アフガニスタンのタリバン政権は障害です。パイプライン建設は、国際的に承認された政府がカブールに成立し、各国政府、融資企業、そしてわが社の信頼が得られない限り、開始することはできません」と述べた。  《九・一一》後を見れば、まさにそのとおりのことが起こり、今やアフガニスタン縦断パイプラインが建設されようとしている。もちろんまったくの「偶然」だから、何も心配することはないのだろう。アフガニスタンのエネルギー情勢に関して二〇〇〇年十二月にアメリカ政府が発表した概況報告書に、以下のように書かれている。 -----------  エネルギーの視点から見たアフガニスタンの重要性は、中央アジアからアラビア海まで石油天然ガスを運ぶ上での、潜在的運搬ルートとしての地理的な位置から発している。この潜在ルートには、数十億ドルと言われるアフガニスタン縦断石油天然ガス輸出パイプラインの計画が含まれるが、こうした計画には現在、深刻な疑問が投げかけられている。 ---------  しかし《九・一一》と、タリバンのことなど忘れたような空爆のおかげで、この深刻な疑問も長くは続かなかったようだ。この侵略を命じたブッシュ政権には、副大統領になったディック・チェイニーも含まれている。二〇〇二年五月、ユノカルの(と言ってもいいだろう)ハミード・カルザイが議長を務める暫定政府の商工業相モハマド・アラムニフジムがパイプライン建設の計画を発表し、「中心企業」はユノカルだと言った。  BBCによれば、パイプラインは「アフガニスタン再建のためのドナー国からの資金」による建設が期待されていると伝えた。言い換えれば、アフガニスタン侵略では武器を売り込んで財産を築いた連中が、こんどはパイプラインの費用を納税者に肩代わりさせるということだ(いや失礼、「貧しいアフガニスタンの人々を助けて国土再建を進めるための援助」だった)。  ラジムによる発表の前にBBCは、ある「石油問題の専門家」が、アフガニスタンにおける「テロとの戦争」は結局は石油のためであるという考えを否定したと伝えている。まったく、こんなふうに学者が世界で現実に起こっていることを理解して、その優れた洞察を学生たちに伝えてくれているのを聞くというのは、心の休まるものだ。  ダンディー大学で石油政策と経済学を教えるポール・スティーヴンズ教授によれば、「パキスタンまで天然ガスを運ぶためのパイプラインが議論されているが、それは現在のことが起こるずっと以前に、政治的経済的な安定性の問題から、放棄されている。したがって、石油が現在の戦争を起こしているという考えはまったく非現実的である。月面のパイプラインでも考えた方がはるかにまともなくらい」なのだそうだ。この文章を見ると、スティーヴンズ教授なら本当に月にでも移住しかねない。さぞ快適なところなのだろう。 「ハリバートンの子会社ブ一フウン・アンド・ルートは◎ブッシュ―チェイニー麻薬帝国の一大構成要素」  たとえごく基本的なことだけでもブッシュ・ファミリーとその手先のネットワークについて調査した経験のある人なら、必ず麻薬コネクションを探すはずだ。それほどに、世界的な麻薬カルテルとブッシュ・ファミリーの関わりは深い。というわけで、ここではブッシュの長年の仲問であり、受益者でもあるディック・チェイニー副大統領について見てみよう。  マイケル・C・ルパートは元ロサンゼルス警察署の捜査官で、組織犯罪情報課に勤務したこともあり、現在は『フロム・ザ・ウィルダネス』という優れたニューズレターを作製している。なかでも「ハリバートン社のブラウン・アンド・ルート ブッシュ―チェイニー麻薬帝国の一大構成要素」と題する二〇〇〇年十月二十四□の記事は、ハリバートンの子会社ブラウン・アンド・ルートがブッシュ―チェイニーの麻薬帝国で果たしている役割に光を当てたものだ。 この企業はアメリカの軍部や各情(諜)報機関、さらにボスニア、コソボ、マケドニアなどを含めた世界中での作戦に深く関わっていて、世界一〇〇カ国以上に二万人の従業員を抱えている。コソボ解放軍(KLA)はCIAが後押しした作戦で、一つには、米英が支配するNATOがセルビアとコソボを爆撃、侵略したときの口実に使われた。もちろんあれも、麻薬と石油パイプラインに関してイルミナティの利益を守るための行動だった。  『クリスチャン・サイェンス・モニター」や『ジェーンズ・インテリジェンス・レヴユー』によれば、西ヨーロッパに流れ込むヘロインの七〇パーセントはKLAが支配しているという。一方ブラウン・アンド・ルートは、同地域でのアメリカ政府の補給・支援に関する契約で数十億ドルの利益を得た。この契約は現在も続いている。  驚くのは、ブラウン・アンド・ルートが政府のために活動している場所が、政府機関による麻薬密輸がおこなわれている場所と、つねに、見事に一致することだ。この点を明らかにした調査報道NPO「センター・オブ・パブリック・インテグリティ」(CPI)は、ディック・チエイニーが会長だった 一九九五年から二〇〇〇年にかけてのハリバートンの財政的成功に麻薬の金が含まれていたこと、それが特に子会社ブラウン・アンド・ルートによるものであることを示唆している。さらに例の、海外でのブラウン・アンド・ルートの契約に対してアメリカの各政府機関から与えられる「融資」がある。マイケル・C・ルパートは言う。 --------------------  この融資は輸出入銀行と海外民間投資公社によって与えられる。ラルフ・マクギー(CIAT作員)の発行する『CIAべ-ス』によれば、どちらの機関もCIA局員が深く浸透していて、役員には日常的にNOC(非公式の護衛)がつくという。ロシアの金融銀行コングロマリット「アルファ・グループ」へのある融資の例では、チュメン石油が所有するシベリア油田の設備改装契約を請け負ったブラウン・アンド・ルートに、二億九二〇〇万ドルが支払われた。  アルファ・グループは一九九八年にチュメン石油の五一パーセント取得を完了したが、これは不正入札が疑われている。またロシア政府の公式報告では、アルファ・グループを寡頭支配するミハイル・フリードマンとピョートル・アーヴエンに「東南アジアからロシア経由でヨーロッパヘ流れる麻薬の運搬に関わった疑い」がかけられている。 さらにこの二人には、ロシアのギャングであるソルンツエヴォ・ファミリーとの関係で、ヘロイン密輸の疑いもある。その同じフリードマンとアーヴェンが(アメリカ政府の)融資を申し込み、ハリバートン社のロビィ活動によって融資が確保された。その結果、アルファ・チュメン油田でのブラウン・アンド・ルートの活動が継続、拡張されることになった。 (CPIの)記事は、アルファ・グループ内に組織犯罪に関わる連中がいて、彼らが詐欺で油田を掠め取ったと述べた上で、FSB(ロシアのFBIに相当)の公式報告、BPアモコ等の石油各社やCIA,KGBの元幹部の言葉、新聞記事などを引用し、確かにアルファ・チュメンとヘロイン運搬に繋りがあることを確認した。一九九五年には、アルファ・グル ープ企業であるアルファ・エコ石油の借り上げた鉄道用コンテナから砂糖に見せかけた袋詰めヘロインが盗まれ、シベリアの町ハバロフスクで売りさばかれた。このときは多くの住民が「酔う」か「毒にあたる」かして問題となった。

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